収録が行われた同年春、磁気共鳴画像装置(MRI)検査で、首の脊髄に灰色にぼやけた影が映った。医師から、髄内に腫瘍ができ、神経を圧迫している可能性があると告げられた。脊髄に腫瘍ができるのは10万人に1~2人とされ、髄内はさらに少ない。治療は手術が基本で、放射線治療が必要となることもある。
「私が!?」。カメラが回っている中で、思わず叫び声が漏れた。「こんなに走ったり、踊ったりできるのに」。半分信じられない思いを抱きつつ、ユーチューブで結果を報告し、「元気です」と付け加えた。
5月に精密検査を受け、長さ5・5センチの腫瘍が見つかった。早期だったが、今後、さらに大きくなる可能性があった。放っておくと、まひが進行して、手足が動かせなくなる恐れもある。「もしも、これまでのように歌ったり、踊ったりできなくなったらどうしよう」と不安が募った。
腫瘍を摘出する手術を21年6月下旬に受けた。当初、年内を予定していたが、5月中頃のコンサート後、首に痛みが表れた。再度の検査で、腫瘍が想定よりも大きくなっていることがわかり、前倒しで手術することになった。
だが、30歳の誕生日を控え、記念のソロコンサートを7月上旬に予定していた。術後1~3か月の入院が必要と聞き、何とかステージに立てないか模索した。「術後には何が起こるかわからない」と医師やマネジャーに説得され、やむなく延期した。
手術は7時間を超えた。術後すぐは首などの痛みがひどく、ベッドから起き上がれなかった。4日目以降は紙をめくったり、床に足をつけてみたりする簡単なリハビリも始めたが、手足の先に違和感があった。
病室のテレビに目をやると、歌番組でAKBのメンバーが「会いたかった」や「ヘビーローテーション」などのヒット曲を熱唱していた。「早く戻って一緒に歌ったり踊ったりしたい」との思いを強くした。
そこからは意欲的にリハビリに取り組むようになり、間もなく歩けるようになった。入院期間は見込みを大幅に短縮し、1週間ほどで退院することができた。担当の医師は回復ぶりに驚きつつ、「目的を持ってリハビリに取り組むと、回復が早まることもある」と説明してくれた。
戻る場所があるということは、心と体両方の支えになるんだと実感した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e95592e39c48417276d9fcd99164568e9349e667
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